田んぼ、池や川、水たまり、身近にある水の中は小さな生き物のいのちであふれています。
小さいのでよほど意識して見ないと存在すら感じません。中には観察に顕微鏡が必要な生き物もたくさんいます。
今回は主に淡水でどんなを生き物を見つけることができるのか代表例を見ていきましょう!
※掲載写真は写真素材サイト等から正式使用しています。
★微小動物&動物プランクトン
ミジンコのなかま
ミジンコ (Daphnia) |
マルミジンコ (Chydoridae) |
分類 | 動物界>節足動物門>甲殻亜門>鰓脚(ミジンコ)綱 |
体長 | 0.7mm~3mm(種類によって異なる) |
観察倍率 | 10~50倍で観察 |
説明 | ピョンピョンと跳ねるように泳ぐ様子から水ノミと呼ばれることもある。水質悪化の原因となる植物プランクトンを主として食べるため、水質改善に大きな役割を担う。 |
生息環境 | 様々な淡水環境に広く生息している。大きな湖から小さな水溜まり、高地にある湿原から栄養豊富な水場に至るまで、多岐にわたる場所で見られる。 |
カイミジンコ[貝形虫]のなかま
分類 | 動物界>節足動物門>甲殻亜門>貝形虫網 |
体長 | mm~mm(種類によって異なる) |
観察倍率 | 10~50倍で観察 |
説明 | 二枚貝のように体の左右に2枚の貝殻をもっている。アクアリウムをやっている人にとっては厄介者で、硬い殻のため魚も食べてくれない事が多い。スイ~と滑らかに泳ぐ。 |
生息環境 | 水田だけではなく、広い湖や小さな水たまり、深い海の底などあらゆる水域に生息している。ほとんどの種が底生で生活をする。 |
カイアシのなかま
・ケンミジンコ
ミジンコと同じ甲殻類ではありますが、ミジンコとは別の系統の生き物です。見た目もどちらかというとカブトエビに似ていますね。
卵持ち | ノープリウス幼生 |
分類 | 動物界>節足動物門>甲殻亜門>六幼生綱>カイアシ(橈脚)亜綱>キプロス(ケンミジンコ)目>ケンミジンコ科 |
体長 | 0.7mm~3mm(種類によって異なる) |
観察倍率 | 10~50倍で観察 |
説明 | 浮遊性の動物。頭部の先端に赤色の複眼を1つ持つ。卵で増え、卵から孵ったケンミジンコは「ノープリウス幼生」という親と全く違う形をしている。肉食で、ミドリムシやワムシ、ゾウリムシだけでなく小型のミジンコを食べる事もある。 |
生息環境 | 池や湖などの止水域、田んぼ等に多く生息する。 |
・イカリムシ
分類 | 動物界>節足動物門>甲殻亜門>六幼生綱>カイアシ(橈脚)亜綱>キプロス(ケンミジンコ)目>イカリムシ科 |
体長 | 5mm~9mm(種類によって異なる) |
観察倍率 | 10~30倍で観察 |
説明 | 寄生性の動物。淡水魚に寄生する。二次感染を引き起こし、小型の魚だと死に至らしめることも少なくない。卵から孵ったイカリムシは、親と形の大きく異なるノープリウス幼生を経て成虫になる。交尾後、雄は死に雌は魚に寄生する。雌は寄生すると頭部を錨型に変形する。再生力が強く、体がちぎれても頭部が残っていれば再生する。 |
生息環境 | 河川、湖、池など幅広く生息する。 |
・ソコミジンコ
(スマホ&ミクロハンターレンズで観察)
分類 | 動物界>節足動物門>大顎亜門>甲殻綱>顎脚亜綱> カイアシ下綱(橈脚類)>ソコミジンコ目>ソコミジンコ科 |
体長 | 0.5mm~1mm(種類によって異なる) |
観察倍率 | 30~50倍で観察 |
説明 | ソコミジンコの雌は精子を体内に貯蓄する事ができ、一度交尾してしまえば一生涯に産む卵を全部受精させる事ができる。 |
生息環境 | 底生性で池や小川、湖の底に多く生息し、俊敏に動き回る。 |
ワムシ[輪形動物]のなかま
ハオリワムシ | テマリワムシ |
分類 | 動物界>扁形動物上門>輪形動物門 |
体長 | S型100~210μm,L型130~340μm |
観察倍率 | ~倍で観察 |
説明 | 口部の繊毛冠が車輪のように見えることからワムシ(輪虫)と呼ばれている。多様な環境で生活する小さな無脊椎動物で、大多数からなる自由生活型、固着定住型、少数派の寄生性のものが存在する。有機堆積物、細菌、酵母、藻類、小さな繊毛虫類、原生生物などを食べる。 |
生息環境 | 池や湖など。 |
繊毛虫のなかま
・ラッパムシ
口を開いた状態 | 丸まった状態 |
▼繊毛で水流を作っている様子
分類 | 原生生物界>繊毛虫門>異毛(ラッパムシ)綱>異毛(ラッパムシ)亜綱>異毛(ラッパムシ)目>ラッパムシ科 |
体長 | 150μm~2mm(種類によって異なる) |
観察倍率 | 20倍程度で観察可能 |
説明 | ラッパのような形をしていることからラッパムシと名付けられた。頭頂部に口部があり、口部に生えた長い繊毛を動かして水流を起こし餌を捕食する。体の中に収縮胞を持っていて、伸縮運動も行う。水中を動き回る事もでき、遊泳時は楕円型に変形することもある。 |
生息環境 | 有機物の多い湖、池、沼などの底に付着している。水中に溶け込んだ酸素が多い環境に発生しやすい。 |
・ツリガネムシ
柄を伸ばした状態 | 柄を畳んだ状態 |
▼柄を伸縮させている様子
分類 | 原生生物界>繊毛虫門>貧膜口綱>周毛亜綱>ツリガネムシ目>ツリガネムシ科 |
体長 | 多くが50~100μm |
観察倍率 | 40倍程度で観察可能 |
説明 | 釣鐘のような形をしているためツリガネムシと名付けられた。柄を持ち、この柄をゴミに付着させている事が多い。これをバネのように螺旋に巻いて伸縮する。頭頂部に口部があり、口部に生えた長い繊毛を動かして水流を起こし餌を捕食する。柄を付けずに遊泳している事もある。 |
生息環境 | 池、沼、水槽の水草などで見つかる。きれいな水域から、有機物が多く強度に汚れた水域を好むものまで様々な種類が存在する。 |
・ゾウリムシ
ゾウリムシ | ミドリゾウリムシ |
ゾウリムシの一種であるミドリゾウリムシは、クロレラを体内で共生しています。ミドリゾウリムシは二酸化炭素や窒素分をクロレラに、クロレラは光合成で得た酸素や糖をミドリゾウリムシに与えて相互に助け合っています。
▼ミドリゾウリムシの観察動画
(スマホ&ミクロハンターレンズで観察)
分類 | 原生生物界>繊毛虫門>梁口綱>ゾウリムシ目>ゾウリムシ科 |
体長 | ゾウリムシ:120~200μm、ミドリゾウリムシ:85~150μm |
観察倍率 | 100~300倍程度で観察 |
説明 | バクテリアを食べて生きる。無性生殖と有性生殖のどちらでも増殖する。 |
生息環境 | 湖、池沼、水田、河川の他、下水などほとんどの水域に生息する。 |
・ミズヒラタムシ[水扁虫]
▼単細胞生物とは思えないミズヒラタムシの歩行
(出典: Masashi Hayakawa ※上動画はミクロハンターレンズで撮影したものはありません)
分類 | 原生生物界>繊毛虫門>旋毛綱>ミズヒラタムシ(ユープロテス)目>ミズヒラタムシ(ユープロテス)科 |
体長 | 100~200μm |
観察倍率 | 100~300倍程度で観察 |
説明 | 単細胞生物にもかかわらず、繊毛を束にして足のように使いトコトコと歩き回ったり遊泳したりするなど、高度な動き方をする。飢餓状態では群れを成し、近縁の生物の死骸を見つけるとそこから遠ざかる行動をする。周りのものを体内に吸い込みながら食べる(貪食)。 |
生息環境 | 田んぼやため池を始め、公園の池や水たまりなどの水底に生息する。 |
・コレプス
コレプスの全体像 (※1) |
コレプスの細胞分裂 (※2) |
(※1)出典:Treinisch, CC BY-SA 3.0<https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons
(※2)出典:Bernd Laber, CC BY-SA 3.0 DE<https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/de/deed.en>, via Wikimedia Commons
(出典: Markroscope ※上動画はミクロハンターレンズで撮影したものはありません)
分類 | 原生生物界>繊毛虫門>前口綱>シオミズケムシ目>コレプス科 |
体長 | 40~80μm |
観察倍率 | 300~500倍程度で観察 |
説明 | 体は板状のものでおおわれ、樽のような形をしている。回転しながら素早く移動する。微小鞭毛虫や細菌類を摂食したり、他生物の死骸を食べたりする。 |
生息環境 | 有機物が多すぎず、酸素の十分溶け込んでいる水環境に生息する。 |
★植物プランクトン
・ミカヅキモ
分類 | 植物界>ストレプト植物門>ホシミドロ(接合藻)綱>チリモ目>ミカヅキモ科 |
体長 | 170~450μm |
観察倍率 | 200~500倍程度で観察 |
説明 | 真ん中の透明な部分は核、緑の部分は光合成を行うための葉緑体となっている。通常、無性生殖を行い細胞分裂するように増える。環境が悪化すると有性生殖を行うが、その際2つの異なる性が融合して接合子という種子をつくる。 |
生息環境 | 池、沼、水田などの淡水性の止水域に生息する。 |
・ボルボックス[オオヒゲマワリ]
分類 | 植物界>緑藻植物門>緑藻綱>ボルボックス目>ボルボックス科>ボルボックス属 |
体長 | 400~1000μm |
観察倍率 | 30~200倍程度で観察 |
説明 | 綺麗な球体をしており、その内側に16個の大きな細胞(生殖細胞)がある。表層は約2000個の体細胞が原形質連絡糸という構造で繋がっていて、それぞれの体細胞には2本の鞭毛が付いている。この鞭毛を使って能動的に動き回る。 |
生息環境 | 水のきれいな湖、沼、水田などの浅いところに生息する。 |
・イカダモ
分類 | 植物界>緑藻植物門>緑藻綱>ヨコワミドロ目>イカダモ科 |
体長 | 12~28μm |
観察倍率 | 400~1000倍程度で観察 |
説明 | 複数の細胞が一列に連なっている様子が筏(いかだ)に見えるため、イカダモと呼ばれる。有性生殖はまれだが、一部の種で確認が報告されている。 |
生息環境 | 湖や沼、池、水たまりなどの底の泥上に生息する。 |
・アオミドロ
螺旋状に並ぶ葉緑体 | 接合 |
分類 | 植物界>ストレプト植物>ホシミドロ(接合藻)綱>ホシミドロ目>ホシミドロ科>ホシミドロ属 |
体長 | 直径20~60μmが多い |
観察倍率 | 400~1000倍程度で観察 |
説明 | トロトロとした緑色の糸状藻類。葉緑体が螺旋状に並んでいるのが特徴。体がちぎれる事で増える無性生殖に加え、有性生殖も行う。有性生殖の際は、他個体の細胞との間に接合管が伸びて細胞同士がくっつき、接合子ができる。 |
生息環境 | 池、湖、水田、小川、溝などに生息する。 |
・珪藻
ハネケイソウ | クチビルケイソウ |
分類 | オクロ植物(不等毛植物)門>珪藻綱 |
体長 | 3~1000μm(種類によって異なる) |
観察倍率 | - |
説明 | 珪藻の特徴はなんといっても、ガラス質でできた殻。死んだ後もこの殻は分解されずに残る。珪藻土マットなどの原料になっているもの。殻で覆われているものの、殻の隙間から粘液繊維を出しゆっくり移動する。 |
生息環境 | 池、湖、水田、小川、溝などに生息する。川底の石を覆っている茶色い藻、これは珪藻であることが多い。 |
★植物プランクトンを除く微細藻類
・シアノバクテリア
アオコの原因にもなる | 顕微鏡写真 |
光合成を行いますが、その名前の通りバクテリア(細菌)のなかまです。
イシクラゲのように気生性のシアノバクテリア(下写真)も存在します。水の中にいる事もあるので、ここで取り上げます。
地面にあってブヨブヨの状態 | 顕微鏡写真 |
・ミドリムシ[ユーグレナ]
分類 | エクスカバータ界>ユーグレナノゾア門>ユーグレナ藻綱>ユーグレナ目>ユーグレナ科 |
体長 | 50~100μm |
観察倍率 | 200~500倍 |
説明 | 動物と植物、両方の性質を兼ねそろえたハイブリッドな生物。食料や燃料などの原料として注目されている。体の形を変えながら鞭毛を使って遊泳する。 |
生息環境 | 湖沼、池や田んぼを始め、海など地球のいたるところに生息する。 |
★淡水の小さな生き物をベン図で分類
植物プランクトン、藻類、珪藻、動物プランクトンなど多くの生き物グループがありますが、その違いや分類がいまいち分からず、様々な文献を参考にして一つのベン図にまとめてみました。
★採取方法
▶容器で直接採取
(干上がりかけた田んぼにて)
この方法が一番簡単で手間がないです。微生物が密集しているような場所でおすすめです。
▶手網を使って採取
(公園の池にて)
すくった後は、微生物が網に張り付いています。網を裏返し、水を薄く張った容器にチャポチャポと浸すことで微生物を容器に移すことができます。
浅い水環境や、水辺に近づきやすい池や湖岸などでおすすめの採取方法です。
▶プランクトンネットを使って採取
▶採取が難しい場合
★ミクロハンターレンズの紹介
いかがでしたか?
顕微鏡と絡めたテーマで引き続きブログマガジンを書いていきますのでよろしくお願いいたします!
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