不思議生物、放散虫の面白い話あれこれ
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放散虫って聞いたことありますか?虫とは書きますが、昆虫じゃあありません。今回は放散虫という美しくも謎に包まれた生き物について記事を書いてみました。
1.放散虫って?
①どんな生き物?
放散虫は、海の中を漂う小さな単細胞プランクトンで顕微鏡で観察できます。アメーバー状の体の中には、ガラスと似た成分でできた内骨格を持っています。大きさは数十μm~数mm(0.1mm程度のものが多い)。
観察には顕微鏡が必要です。
(上画像:ミクロハンターキットPLとiPhone X Pro を使って放散虫を観察している様子)
人間をはじめとする多くの生物の骨はカルシウムでできていますが、放散虫の骨格はなんと、二酸化ケイ素(ガラス質)でできています。
この骨格は分解されにくいため化石になりやすいです。放散虫のような小さな化石を「微化石」と言います。
【豆知識】化石になった放散虫も透明な殻をしているの? 白くなっているケースの方が多いそうですが、透明のまま化石になっているものも良くあるそうです。 |
②放散虫の種類
化石化した放散虫も含めると、名前の付いているものだけでも1万種類以上いると言われています。名前の付いていないものも数多く存在するそうです。
そして現在生きている放散虫は約800種類とのこと。
③放散虫の名前の由来
放散虫の名前は、外国語から訳された名前です。
- 英語: Radiolaria
- ラテン語: radiolus, radius(「放射状の棒」を意味する)
細い軟体部を四方八方に広げている様子から「Radiolaria」と名付けられ、日本語では「放散虫」と翻訳されました。
④放散虫の形
(引用:Scientific Figure on ResearchGate)
放散虫の骨格は化石になりやすく、世界中で放散虫化石が発見されています。放散虫の骨格は長い歴史の中で変化を繰り返し、さまざまな形をしています。そのためこれらの化石は、地層ができた時期やその場所の環境について教えてくれる大切な手がかりとなります。
放散虫は骨格の形によって食べる餌や食べ方が違うらしく、「食」が形を作っているという説もあるそうです。
2.放散虫の謎
放散虫は多くの謎に包まれた生き物です。飼育が難しく、また生きている放散虫の研究をしている学者は非常に少なく研究が進んでいません。
そのため放散虫の生態について詳しいことはよくわかっていません。
放散虫の体は、なぜガラスでできた骨格を持っているのか?骨格がどうやって作られ、生活にどのように役立っているのか?寿命はどれくらいなのか?放散虫は何を食べているのか?どのようにして子孫を増やしているのか?といった基本的な生態についても、まだ多くが謎に包まれています。
だからこそなんだか魅力的ですね!
ちなみに放散虫の化石研究者は世界中で300人ほど、生物研究者はたった10人しかいないそうです。これからの研究で、放散虫の秘密が少しずつ明らかになることを期待しています。
3.放散虫の観察
①生きている放散虫の観察&飼育
-
放散虫の採取
海岸からでもプランクトンネットで比較的簡単に採取できます
- 観察
家に持ち帰った試料を顕微鏡で観察(倍率200~400倍) -
飼育
短期飼育する場合は、放散虫のみ綺麗な海水に分離してあげます(他の生き物や死骸などがいると海水の状態が悪くなるため)。冷蔵庫などに保管し、水温は低く保って下さい。
②化石になった放散虫の観察
-
岩石の採取
放散虫を多く含む珪質泥岩やチャートなどを採取します。
名前 珪藻土 チャート 珪質泥岩 写真 説明 主に珪藻(植物プランクトン)の死骸が堆積したもので、不純物が少なく、ほどよい固さのもの。放散虫も含まれる事が多い。 珪藻土が熱や高圧を受けて硬くなったもの。主成分は二酸化珪素(SiO2)で放散虫や海綿の死骸(殻や骨片)が堆積してできた。 珪藻土が熱や高圧を受けて硬くなったもので、チャートと泥岩の中間的な岩石。チャートほどではないが、放散虫を多く含む。 場所 日本中に分布。主な産地は北海道、石川県能登半島、岡山県、大分県、鹿児島県など。 日本中に分布。河原や海岸の石ころに交じってよく入っている。 北海道から東北の日本海側、北陸周辺にわたって広く分布。 -
放散虫の分離
(A)珪藻土の場合
原石を細かく砕き、小鍋で煮てドロドロに溶かす。次にオキシドールを少量加えて不純物を溶かす。
詳しい分離方法(参考):コゲラ工房、砂質堆積物からの放散虫殻の懸濁分離法
(B)チャートや珪質泥岩の場合
フッ化水素酸(ガラスをも溶かす強酸)という薬品を使って取り出すことが多いです。水酸化ナトリウムを使う方法もあります。
詳しい分離方法(参考):「放散虫化石の処理方法」 - 観察
顕微鏡で観察します(倍率100~400倍)。
【豆知識】昔は放散虫を単体で観察するのは難しかった ちなみにこの方法が発見されるまでは、岩石薄片という岩石を薄切りにした方法でしか観察できませんでした。フッ化水素酸を使って放散虫を個体で観察できるようになり日本の地学研究が一気に進みました(放散虫革命)。 |
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4.放散虫化石のでき方
チャートなどは骨格を持つ海洋生物の死骸の固まりなのですが、放散虫のような小さな生き物があのような大きい岩石になるっていうのはなかなか想像が難しいですよね。
- 放散虫が死んで海底に積もり固まります(軟組織は分解されて無くなり、外骨格は残る)
-
海底プレートによって運ばれ、大陸プレートとぶつかったところで沈み込みます。その際に非常に高い圧力がかかり海洋プレートの上層部が剥ぎ取られて付加体になります。
- 後から後から新しい付加体が押し寄せ、古い付加体は隆起し陸方面に押し上げられます。ここで地質学的に重要なのが、1番最初に押し寄せた付加体(古い付加体)ほど層の上に来るという点です。
(出典:産総研地質調査総合センター)
5.常設展示会場・博物館
※予約が必要になる場合もありますので、詳しくは各HPをご覧になって下さい。
- 東北大学総合学術博物館
<内容>館内の微化石コーナーに放散虫の大きなガラス模型や3Dモデルが常設展示されている。
<場所>宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-3
<HP>http://www.museum.tohoku.ac.jp/ - 国立科学博物館
<内容>地球館B2Fに常設の微化石コーナーがある。放散虫のパネル写真や放散虫化石模型などが展示されている。
<場所>東京都台東区上野公園7-20
<HP>https://www.kahaku.go.jp/index.php - 名古屋大学博物館
<内容>放散虫の小さな常設コーナーがある。
<場所>名古屋市千種区不老町
<HP>https://www.num.nagoya-u.ac.jp/exhibitions/permanent.html
6.ミクロハンターレンズの紹介
今回は放散虫について色んな角度で記事を書いてみました。いかがだったでしょうか?
顕微鏡と絡めたテーマで引き続きブログマガジンを書いていきますのでよろしくお願いいたします!
最後に「ミクロハンターレンズ」もぜひ紹介させて下さい。
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